大人「これからは消費の時代。豐かな消費文化を築くんだ。日本人は働きすぎる」
不佞「人間は必死に生産することを文化としたんだらう、それを捨てて文化は成り立つのかなあ。豚になるんぢやないかな」
大人「お前は考へが古いね」
不佞「怠け者なのにね」
大人「二十一世紀は『こころ』の時代だよ」
不佞「精神病院が繁昌する時代になるンだね。近頃變な人が増えてきたし」
大人「さうぢやない、宗教の時代だ」
不佞「困つた人間が宗教に縋るのかー。さうなるかもね、なるだらうな」
大人「『個』が大事にされなくちやならんといふことだよ」
不佞「『個』があるなんて、あんまり宗教的ぢやないね」
大人「今こそカクメイの何とかかんとか」
不佞「共産主義の世界には物慾に塗れた人はゐないんでしよ」
大人「さうです」
不佞「でも、資本主義を捨てて共産主義に移るためには、物慾を捨てなきや無理ぢやないの」
大人「そこが大切」
不佞「でも、物慾を捨てたら、共産主義に移行するまでもなく、大同の世になるんぢやないの」
大人「お前にはまだ判らないやうだ」
……と、周圍の輿論やら大人と、現實に、また妄想の裡に語らつてゐたのだつた。三つ子の魂なんとやら、と今の己を顧みて嗤ふ。