新生兒を見に行つた病院で、二組の新米兩親を見た。
母親は産後で足許が少し覺束無かつたり、子を抱く手つきがまだぎこちなかつたりするが、その邊で見かける婦人一般の擧動である。
父親は變だ。クネクネしてゐる。街中でこんなクネクネはちよつと見かけない。子を見て、己の體の動かし方に戸惑つてゐる。母子の寫眞を撮つたり、新生兒室と己を隔てる硝子窓に貼り附いたりする間中、クネクネしてゐるのである。
母は子を産んだその瞬間から母であるが、父は追々父になるといつたことをよく耳にする。我が子を見て、クネクネする父、ぎこちなく我が子を抱く母を見て、一家に幸あれと祈つたことである。